コントロール管理の解説

1.マネジメント管理とコントロール管理

日本語の“管理”という言葉は、経営管理というときの管理と、生産管理や品質管理というときの管理があって、広い概念を持ったものであることが分かる。それだけに、意味があいまいにもなっている面がある。

英語では、経営管理はマネジメント(Managements)という言葉があり、生産管理や品質管理はコントロール(Control)という言葉があり、明確に区別して用いられている。

マネジメントサイクルと管理サイクル

(1)マネジメント管理

英語のマネジメントの原意は、支配することとされており、これから、統治する、経営するなどの意味を持つようになったようである。

(2)マネジメント・サイクル

経営管理で用いる“マネジメント・サイクル”では、経営計画を立て、組織を作って、指揮命令系統等を調整して、業績を評価して統制することとしている。
したがって、マネジメント管理では、経営資源のヒト、モノ、カネ、情報を運用し活用をして、業績(利益)を上げる、または企業価値を上げるようにマネジメント・サイクルを回すようにしなくてはならない。

もし、業績が上がらないような場合には、経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を自由に取り替えることがあるし、マネジメント・サイクル(計画、組織、調整、統制)の内容そのものを変えることがある

(3)コントロール管理

英語のコントロールの原意は、取り締まることとされており、そこから統制する、制御するなどの意味を持つようになったようである。

生産管理はプロダクション・インヴェントリー・コントロール(Production Inventory Control )であり、生産と在庫のコントロールを意味している。

品質管理はクオリティ・コントロール(Quality Control)であり、品質をコントロールすることを意味している。

原価管理はコスト・マネジメントとコスト・コントロールがあり、工場現場ではコスト・コントロール(Cost Control)を用いて、実績原価をコントロールすることを意味している。

このように、工場で使われる管理の言葉はすべてコントロールの意味で用いなければならないことがわかる。

コントロールであるから、コントロール目標値を決め、現在の実態値を把握してフィードバックし、目標値と実態値の差を縮めるように調整することが基本である。

しかしながら、コントロール管理には、コントロール管理がうまくいかないからといって、ヒトを取り替えたり、モノ(機械設備)を換えたり、カネの工面を変えたりすることはできない。つまり、マネジメント管理では業績が悪いときは、御者も馬も馬車も取り替えることができるが、コントロール管理では、御者はコントロールがうまくいかないからといって馬を換えることはできない。与えられた馬を使って、目標に向かわせることしかないのである。

(4)管理利益(第3の利益)

コントロール管理がうまくいけば、管理利益が得られる。この利益は品質(Q)のバラツキ、実績原価(C)のバラツキなどのバラツキを低く抑えるものづくりや、外乱とロスを抑えたものづくりができるようになれば得られる利益のことで、この利益分だけコストダウンできることになる。

(5)コントロール管理サイクル

コントロールの“管理のサイクル”は、旧知のPDCA(Plan, Do, Check, Action)を回すことになる。

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2.従来の工場管理の問題点

従来の工場管理において、在庫管理、品質管理、原価管理、機械稼動管理、などの管理はなされてきたが、たとえば、在庫管理は棚卸しによって実在庫の把握はなされても、その後の実在庫を目標在庫になるようにコントロールする対策がなされてこなかったために、成り行きの在庫が分かるだけにすぎなかった。原価管理については、その個別の実績原価の把握さえままならず、目標の原価以下に実績の原価をコントロールすることはほとんどなされることはなく成り行きの実績原価を慨嘆するだけだった。

このように、従来の管理は、目標値も決めず、積極的に実績値を良くするように働きかけることもせずにきた。その意味で、マネジメント管理の業績把握はなされてきたとしても、コントロール管理の視点から見れば、ほとんどなにもなされてこなかったといえる。

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3.コントロール管理法

コントロール管理の実際の進め方について述べる。

コントロール管理は管理サイクルを確実に回して行う。管理サイクルとは、Plan(計画と目標設定)、Do(作業指示、実行), Check(実態把握と評価), Action(対策)の4つを順次回して行う活動のことである。

したがって、在庫コントロール管理においては、部品アイテム一点ごとに目標在庫数を決めて、実在庫数を目標在庫数になるように、在庫の入りと出を統制することで、必要最小限の在庫数が維持されるようにしなければならない。

また、実績原価コントロール管理においては、個別原価の原単位実績データを採取して、同じものを繰り返しつくるごとに原単位データがばらつくことを確認した上で、原単位目標値を決めて、その目標値に向かって実績データのばらつきを収束させるようにコストミニマムなものづくりに変えれば、コストダウンできるようになる。

このように、管理サイクルを回すコントロール管理がなされれば、従来の管理より在庫数や製造リードタイムを格段に改善させることができ、品質のバラツキや原価のバラツキを極小化でき、またはロスを抑えたものづくりができて、コストダウン(管理利益)を実現できることになる。

もちろん、コントロール管理の管理サイクルを回すのはヒトであり、作業者と現場監督およびコントロール管理担当スタッフです。(自動制御の意味ではない)そして、コントロール管理を行うときには、目標としての情報やデータと、実態としてのフィードバックされる情報やデータが不可欠で、これらの情報やデータをヒトが使って、精度高く・スピーディ(速く)にPDCAの管理サイクルを回わさなければならない。

(1) PLAN;計画と目標設定

コントロール管理の基本は、“はじめに目標ありき!”である。目標のないコントロール(制御)がないように、目標のないコントロール管理もありえない。当然のことながら、コントロール管理の目標は定量的な数値目標でなければならない。 

(2) DO;作業指示と実行

日限、コスト、または品質の実績値は、ものづくりの実行のなされた瞬間に決まってしまい、この実績値は後ではよくすることができない。たとえば、工程の日限が守られなければ他工程にロスを発生させるし、不良を作った後で手直しすれば手直し工数分だけコストは上がることになるからである。

したがって、このものづくりの実行中のコントロール管理が重要である。従来の管理において、このDOは現場任せにされており、それでいて、現場がいい実績を残せるような現場への支援はほとんどなされてこなかった。

その最もいい例が、生産管理である。生産管理も生産コンロール管理であるが、資材所要量計画や能力平準化計画によって、調達資材の納入日限や工程日限という目標値を現場へ指令したままで、納入日限は担当者まかせ、工程日限は現場任せになっていて、日限を守るための積極的な介入すなわちコントロール管理は成されてこなかった。現場任せといいながら、生産担当者や現場には資材調達の進捗状態や工程進捗状態が分かるような情報システムの支援もしてこなかったから、日限を守るための臨機応変な対応も後手にまわることが多いわけである。

(3) CHECK;実態把握と評価

実績値の収集は、ペーパーレスとインプットレスになされなければならない。また、収集された実績値はコントロール管理するヒトに必要な情報が必要なリアルタイム性で、図表化して提供されなければならない。

したがって、この実態把握と評価のためには、情報発生源からの直接情報採取とリアルタイな情報提供を定義としたPOP(生産時点情報管理)システムが不可欠である。

従来の工場管理がおざなりの管理にとどまっていたのは、実績値の収集に問題があって、実績値のデータの精度と集計・図表化の遅れがあって、CHECKのところで実態把握と評価ができずに停滞して、管理サイクルを回せないでいたからと考えられる。コントロール管理のPDCAを早く回すには、なによりもCHECKにおける実態把握の自動化とリアルタイム情報提供が必要である。

実際の評価は目標値と実績値との差で行う。実績値が目標値に近づいていれば対策が的を得ていることになるが、近づかないまたは目標値から離れる場合は、別の対策を探さなければならない。このような評価の判断が即断即決できるようにしておくことが、コントロール管理を早くまわすことになる。

(4) ACTION;対策

対策はコントロール管理のテーマにもよるが、いろいろなものが考えられる。

  1. 作業スピードを上げる。(記録への挑戦)
    セル生産の組み立てのように一人で多工程の組立てを行う場合などは、自身で作業目標時間を設定して、自分の記録に挑戦するようにして作業スピードを上げるという対策がある。
  2. 作業手順を変える。(作業手順の試行錯誤)
    作業の手順を変えてやってみる対策である。
  3. 作業のやり方をかえる。(作業の見直し)
    作業工程の再設計など作業のやりかたを全面的に見直してやってみる対策である。
  4. 付加価値時間を圧縮する。(準備、段取り、後始末の見直し)
    価値を生む時間と価値を生まない時間とを見極めて、価値を生まない時間を削減する対策を考えるもので、準備時間、段取り時間、後始末時間などを削減するものである。
  5. ものづくりの仕組みを変える。(調達、配膳、物流、生産準備)
    生産現場以外の調達、配膳、物流、生産準備などのしくみが悪いために現場に生産中断などの無駄時間を発生させている場合にはこれらを根本的に対策しないと無駄時間を減らすことができない。
  6. マネジメント管理で対応する。(ヒト、モノ、カネの刷新)
    コントロール管理ではできないが、マネジメント管理ではヒトの交代や削減、モノ(機械設備)の更新や増設、カネ(工場で前払いされた製品在庫等のカネ)の責任を営業にするなどの対策をすることができるので、これに対策を委ねることもある。

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4.利益増出の管理テーマ

管理利益(第3の利益)を追求できるコントロール管理のテーマとしては、次の8つのテーマがあり、それぞれのコントロール管理がうまくいけば、20%から50%の改善が可能である。 

  1. 工数のコントロール管理
  2. 個別実績原価のコントロール管理
  3. 機械稼動のコントロール管理
  4. 材料・製品在庫のコントロール管理
  5. 仕掛り在庫のコントロール管理
  6. 製造リードタイムのコントロール管理
  7. 品質のコントロール管理
  8. 設備保全のコントロール管理

これらの各テーマのコントロール管理の実際の進め方は、「新しいコストダウン8つの手法」新技術開発センター発行のマニュアルを参照されたい。

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